「フルートのタンギングがうまくできずに、音がかすれてしまう」「どのようにフルートのタンギングの質を高めていけばいいかが分からない」このような悩みはありませんか?
実はタンギングはただ音が切れれば良いわけではなく、奥深いテクニックやバリエーションが必要となってきます。
特に音の立ち上がりで使うタンギングは、音楽の第一印象を決める重要な要素です。
そこでこの記事では、吹奏楽CDのレコーディング30枚以上に携わった著者が、フルートのタンギング方法について、基礎から練習方法、ダブルタンギング・トリプルタンギングといった発展的なテクニックまで詳しく解説していきます。
この記事を読めば、フルートのタンギングに関する幅広い情報を手にすることができます。
ぜひ最後までお読みください。
タンギングの定義とフルートのタンギングの仕組み
「タンギング」とは、フルートを含めた管楽器の奏法で、舌を使って音を切ったり、発音するためのテクニックのことを指します。
(タンギングの「タン(tongue)」は英語で言う「舌」のことです。)
タンギングは一般的に、演奏しながら「トゥ(Tu)」という発音を行うことで、音を切ります。
フルートのタンギングの原理を解説すると、「トゥ(Tu)」などの発音を行うと、舌が上顎(あご)に1度くっつくことで、息の流れが一瞬せき止められます。
この瞬間に音が切れ、上顎から舌が離れると、息が再び流れ出し音が鳴るようになります。
息はロングトーンのように真っ直ぐ流しており、音が切れるたびに息を入れ直しているわけではないので注意してください。
あくまで舌で息の流れをせき止めて、音を切るのがフルートのタンギングです。(ちなみにクラリネットやサックスなどのリード楽器は、舌でリードの振動を止める点に違いがあります。)
舌の先を少し後ろに引く感じでタンギングを行うと、出ていこうとした息をせき止めて、開放してあげる感じがつかめるかもしれません。
また中級者以上は、舌を「付く動き」と「離す動き」の2つがあることを意識してみると良いでしょう。
なお、タンギングを行うときの発音には他にも、「ク(Ku)」「ドゥ(Du)」「ル(Lu)」などがあります。
ちなみに欧州の方々は、「Tu」ではなく「T」だけの発音でタンギングすることができ、軽やかでクリアなタンギングをする際に使うそうです。(日本語はどうしても母音がついてしまうので、「T」だけの発音は日本語にはありません。)
フルートのタンギングの場合、上顎から舌を離した際に様々な発音を行うことが可能です。
発音の仕方によってニュアンスが変わりますので、ぜひ色々なタンギングを試してみてください。
フルートのタンギングのコツ・汚くならないために
次にフルートのタンギングのコツについて解説します。
フルートのタンギングが汚くなってしまったり、音がかすれてしまったりする方は必見です!
舌の先を軽く触れるように演奏する
フルートのタンギングをする際に、舌全体を上顎につけてしまってはいけません。
舌先を軽く上顎に触れるだけで、十分に息の流れをせき止めることができるからです。
タンギングで使う舌の面積は非常に小さい、ということを理解しておいてください。
音がひっくりかえってしまったり、速いタンギングができない原因は、この舌の使い方が上手くできていないというケースが多いです。
特にスタッカートでは難しく感じるかもしれません。フルートを使わず、口だけで言えるようにトレーニングしてみましょう。
また舌先が触れる位置も重要で、上の前歯と上顎の境目付近を狙って当てるようにしてください。(ただし、口の形や舌の長さによって個人差がありますので、研究が必要です。)
舌と上顎が触れる位置が、あまり奥の方(喉の方)では、速いタンギングは行いにくいです。
舌の動きを小さくする
舌の動きを最小限でタンギングを行うことで、速くタンギングができたり、舌が疲れにくくなったりするというメリットを享受できます。
舌の動きが大きくなる方は、口の中が開きすぎてしまっている傾向があるケースが多いです。
フルートを演奏するときは「喉を開く」と習った方も多いと思います。
確かにフルート演奏時に喉を開くこと自体は間違いではありませんが、開きすぎている方も多くいらっしゃる印象です。
喉を開きすぎると、口の中の容積が広くなりすぎてしまいます。
喉を無理に開こうとするのではなく、歌声を出しているような喉の状態を意識してみましょう。
歌声を出せば、十分に喉は開いているので、これ以上無理に広げる必要はありません。
なお、舌だけでなく口周りも疲れてしまう方は、アンブシュアの基本ができていない可能性があります。
フルートのアンブシュアに関しては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
>フルートのアンブシュアとは?安定させる練習方法やお悩みの解決方法を解説!
舌に力が入っていないか、常に意識する
タンギングを繰り返していると、徐々に舌の力が入ってしまう方がいらっしゃいます。
舌だけでなく指などもそうですが、力んでしまうと速い動きというのはできません。
特に舌の根元は力が入りやすいので、注意したいポイントです。
タンギングを繰り返していると、喉や首周りに力が入ってしまうというのも、原因を辿ると舌に力が入っていると考えられます。
舌の奥と喉はつながっているからです。
舌だけでなく、喉や首回りなど、広い範囲で脱力を考えるようにしましょう。
演奏中に力んでしまった場合は、一旦演奏を止めて、身体全体をリラックスさせてから演奏するようにします。
力が入ったまま演奏を続けるとそれが癖になり、脱力をさらに難しくしてしまうからです。
息の流れを止めない
前述したように、息の流れはロングトーンと同じように行い、舌だけで音を切ります。
息のスピードを緩めず、レガートで吹いているときと同じような息づかいで吹くことが必要です。
息の流れが止まってしまうと、速いタンギングがやりにくくなったり、音の立ち上がりが不明瞭になってしまったりする弊害があります。
フルートの効果的なタンギング練習方法
タンギングの基本練習には次のような楽譜をよく使います。

まずはメトロノーム♩=60くらいで(これより遅くてもできるテンポで構いません。)やってみましょう。
そこから徐々にテンポを上げていきます。
できていないのに無理してテンポを上げることは避けて、確実にできるテンポで練習を行うようにしてください。
また、上記の楽譜を様々な音域でやることも重要です。
低音域と高音域では吹奏感が異なるので、様々な音域でタンギングに慣れていくようにします。
前述したように、ロングトーンと同じように息は出しっぱなしで、舌だけで音を切る意識を大切にしてください。
ここで紹介した練習方法は主に初心者に向けてのものでしたが、中級者・上級者も改めて上記の譜例で練習する価値はあります。
上記のような譜例であれば、曲やエチュードなどと違って、タンギングだけに意識を集中することが可能です。
その中でより質の高いタンギングを目指して練習してみてください。
あえて舌を使わない、ノンタンギングでの音の立ち上がり練習
音の立ち上がりを美しくするために、あえて舌を使わずタンギングを行わない(ノンタンギング)で立ち上がりを練習する方法も効果的です。
その際の舌の位置は、何もせずにリラックスして口を閉じた状態と同様の位置でセットしておきます。
お腹(横隔膜)を使って、息のスピードを上げて音を立ち上がってみましょう。様々な音域でやるとさらに効果的です。
息だけでもきれいに立ち上がれるように、息のスピード・息を当てる角度・息の太さなどを研究してみましょう。
やはり管楽器で大切なのは「息」であり、タンギングはあくまで補助である、という意識を持っておいてください。
ダブルタンギング・トリプルタンギング
ここまで解説してきたタンギングは、通常のタンギングである「シングルタンギング」のテクニックや練習方法でした。
ここからはシングルタンギングでは間に合わない速いタンギングが必要なときに使うテクニック、「ダブルタンギング」「トリプルタンギング」の解説を行います。
難易度はシングルタンギングと比較してもかなり高いので、シングルタンギングがきちんと出来るようになってから取り組んでみてください。
シングルタンギングは「トゥトゥ(Tu Tu)」の発音だったのに対し、ダブルタンギングは「トゥクトゥク(Tuku Tuku)」に、トリプルタンギングは「トゥクトゥトゥクトゥ(Tukutu Tukutu)」となります。
実際にフルートを使わず、口だけで発音してみても、ダブルやトリプルを使った方が速く音を切ることができるのが分かると思います。
質の高いダブルタンギング・トリプルタンギングとは、「トゥ(Tu)」と「ク(Ku)」の発音の差が小さい、あたかもシングルで行っているようなタンギングとするのが理想です。
そのため「ドゥ(Du)」と「グ(Gu)」で発音すると、不明瞭になりやすいというデメリットはありますが、発音の差が小さくなりやすいのでこちらも試してみてください。
ちなみにダブル・トリプルはあまりに遅いテンポになると逆にやりにくくなります。
テンポ♩=110程度の16分音符を目安に練習を始めると良いでしょう。
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