【実はお腹や横隔膜は使ってない?】フルートのビブラートを完全解説~かけ方や練習方法・より美しくかけるコツなど

「フルートのビブラートがかからない」「そもそもフルートのビブラートはどこでかけるの?」「きれいなビブラートにするための練習方法が知りたい」このような悩みはありませんか?

フルートのビブラートに関しては、知られていない事実が数多くあります。

実はフルートのビブラートは、お腹・横隔膜ではかけていません。

そこでこの記事では、吹奏楽CDのレコーディング30枚以上に携わった著者が、フルートのビブラートの方法について、基礎から練習方法、きれいにビブラートを聴かせるコツまで詳しく解説していきます。

この記事を読めば、フルートでビブラートをかけられるようになったり、よりきれいにビブラートをかけるためのヒントを得ることができます。

ぜひ最後までお読みください。

【大前提】そもそもフルートのビブラート練習はいつから始めるべき?

結論を言うと、「音がまっすぐ安定して伸びるようになったら」ビブラートの練習を始めてしまって構いません。

なぜならビブラートは「奏法をコントロールをして音を揺らす」技術なので、真っ直ぐ音が出ないと、音をビブラートを使って意図して揺らしているのか、それとも奏法の技術が未熟なため無意識に音が揺れてしまっているのかが分からなくなるからです。

つまり、ロングトーンをコントロールできていないと、ビブラートをコントロールすることができません。

「フルートを演奏すると必ずビブラートがかかってしまって、真っ直ぐ伸ばす(ノンビブラートでの演奏をする)ことができない」という方もたまにいらっしゃいます。

これはロングトーンのコントロールがまだできていないのに、ビブラート練習を始めてしまった方の典型例です。

一方で、「自分の奏法はまだ固まっていない」と言い張って、頑なにビブラート練習を始めない方もいらっしゃいます。

もちろん安定して音を伸ばせるまではビブラート練習を始めるべきではありませんが、音をまっすぐ伸ばせるフルート奏者がビブラート練習を行わない、というのも良くありません。

なぜなら、「ビブラートをかけるだけ」ならそれほど時間はかかりませんが、「美しいビブラート」を習得しようとすると、かなりの長い年月が必要になるからです。(むしろビブラートを美しくしていく過程には終わりがない、といった方が正しいかもしれません。)

音がまっすぐ伸びるようになったら、一刻も早くビブラート練習を始めるようにしてみてください。

フルートのビブラートのかけ方・どこでかけている?

フルートのビブラートは音量の大きい・小さいで波を作ります。(このビブラートのかけ方は「歌」と同一です。)

一方でサックスや弦楽器などは、「音程の高い・低い」でビブラートをかけています。(フルートでもビブラートをかけることで音程が変わることはありますが、あくまで音量の大小がメインです。)

ではこの音の大小をどこで作っているかと言うと、お腹(横隔膜)と長い間にかけて言われてきました。

しかし、最新の研究結果によると、フルートのビブラートは「喉(声帯周辺)」と「胸の呼吸筋」を使っていることが判明しました。(ちなみに横隔膜を使っていたフルート奏者は、誰1人としていなかったそうです。)

これはフルート奏者を集めて、レントゲンや筋電計などを使ってビブラート時に身体のどこを使っているのかを実験した結果となります。

なお、この実験にはオーレル・ニコレ氏といったフルート界の巨匠も参加していたそうです。

喉だけでビブラートをかけると、大きな波をかけることができないので、胸を使って波を増幅します。(喉だけでかける小刻みなビブラートを「ちりめんビブラート」と呼び、歌では使用されますが、フルートではNGとされています。)

喉は最後の微調整にだけ使います。

お腹(横隔膜)を使ったビブラートには、次のようなデメリットがあるため、推奨されません。

  • 機械的で波が激しいビブラートとなってしまい、実用性がない
  • 横隔膜を使ったビブラートでは横隔膜が緩んでしまい、腹式呼吸ができない

実際にはプロのフルート奏者であっても、どこでビブラートをかけているのか、はっきりと分からない方も多いようです。

ですので、身体のどこの部分でビブラートをかけているのか曖昧になっている方は、正しいビブラートがかけられている可能性が高いです。

ビブラートの練習方法

ビブラートの効果的な練習方法は、奏者のレベルによって変わってきます。

ここではレベル別に効果的なビブラートの練習方法を練習方法を解説していきます。

初級編①(ビブラートがかからない方向け)

犬が「ハッハッハッ」とやっているような、お腹(横隔膜)の動きでビブラートをかける方法があります。

前述した通り、フルートのビブラートは横隔膜ではかけませんが、初級の段階では横隔膜を使った練習も効果的です。(フルート界の巨匠、ジェームズ・ゴールウェイ氏もこの練習を推奨しています。)

横隔膜を使うと、規則的な振動を息に与えることができます。

そしてその振動を与えるテンポを徐々に上げていくことで、ビブラートにすることができます。

お腹・横隔膜を使うと、ビブラートにする感覚をつかみやすいというメリットがあるのです。

しかし、横隔膜を使ったビブラートには、前述した通りデメリットがありますので、このままでは実際の演奏では使えません。

あくまでこの練習方法はビブラートの感覚をつかむためのもの、喉や胸の正しいビブラートに移行するためのヒントであることをおさえておいてください。

そして音程は下がらないように注意します、むしろ基準の音程よりも高い音程を狙うくらいで丁度いいです。

初級編②(波を作ることができる方向け)

ビブラートの波を既にかけられるフルート奏者は、一定のテンポで均一にビブラートをかけられることを目標にします。

メトロノームを使って、次の譜例のリズムで均等にビブラートをかけられるようにトレーニングしてみましょう。

テンポは♩=60前後から、無理のないテンポで始めてみてください。

タンギングとは異なり、速いビブラートができれば良い、という訳ではありません。

過度に速いビブラートは実際の曲で使うことはないからです。

♩=80で16分音符(1拍に4つ)の波が入れば十分で、ここを一旦の最終目標としましょう。

あまりに速いビブラートは、いわゆる「ちりめんビブラート」とも呼ばれ、フルート演奏ではNGとされます。

慣れてきたら、音階などを使って幅広い音域で練習するようにしましょう。

中級編

ビブラートのテンポが安定してきたら、簡単なメロディを使ってビブラートを入れてみる練習に入ります。

実際に曲やエチュードでビブラートをかけてみると、次のような問題点が生じてくるはずです。

  • 特にブレス直後の音で、ビブラートがかからなかったり、ビブラートを狙ったテンポでかけられない
  • 音が変わると、吹奏感も変わるためビブラートが安定しない

基礎練だけでは身につかない、ビブラートの難しさを感じることになります。

ただし、ビブラートは音楽表現の単なる1手段に過ぎないので、ビブラートだけに頼りすぎず、音色や歌い方も含めて、どのように演奏すればより魅力的なメロディになるかを考えるようにしてみてください。

上級編

中級編までのビブラートのかけ方では、どうしても不自然で機械的な演奏になってしまいます。

自然で音楽的な演奏をするには、ビブラートの「深さ」と「速さ」を音楽に合わせてコントロールすることが必要です。

波の深さ・速さを可視化すると、ビブラートは大きくわけると次の4パターンに分類できます。

例えばパターンAは、ビブラートの中でも主張が弱いので、ノンビブラートに近い効果が得られます。

音量がpであったり、穏やかな箇所であっても、ノンビブラートでは味気ないと感じる部分で有効に使えます。

逆にパターンDは、感情の高ぶりや強い主張を表現でき、フレーズの頂点・高音域・音量がfのときなどに有効に使えます。

1番ビブラートの効果は高いですが、たくさん使ってしまうと、どこが盛り上がっているのかわからなくなるという、デメリットもあります。

ちなみにビブラートをかける場合、必ずA〜Dの4パターンのどこかに当てはめなくてはならない、というわけではありません。

あくまでこの4つは目安であって、例えばA.〜B.の間くらいでかける、という選択肢もありです。

こうすることで、無数のビブラートのパターンができます。

ビブラートを上達するうえでの誤解や注意点

ここまでフルートのビブラートの仕組みや練習方法を解説してきました。

しかし、この記事で掲載されているような考え方や練習法でビブラートに取り組んでいるけれどもなかなか上達しない、という方も多いのではないでしょうか?

それはビブラートに関する考え方にこれから紹介するような誤解があるからかもしれません。

ビブラートは音楽の主役ではない

ビブラートはあくまで音楽表現のサブ的な要素である、と考える方が良いです。

著者はビブラートのことを、ステーキで言うところのスパイス程度に考えています。

プロや上級者の演奏を聴いて感動するのは、ビブラートがあるからではありません。

美しい演奏には、前提として美しい音色・美しい音楽表現が必ずあります。(著者はこれらをステーキのメインである「肉」と考えているわけです。)

「ビブラートをかければ、ビブラートの上達さえすれば、美しい演奏になる」と考えているフルート奏者は多い印象があり、警笛を鳴らしたいです。

音楽的に吹けていないのにビブラートをかけても、ただの波になるだけで、効果はほとんどありません。

ビブラートに頼りすぎたり、過度に期待するのはやめましょう。

ただし、「音楽的に美しい演奏がノンビブラートで演奏できるまで、ビブラートの練習に一切取り組んではいけない」というわけではありません。

ビブラートを習得するにも時間がかかるため、どちらも並行して磨いていくようにしましょう。

良いビブラート・良い音楽をイメージできているか

「フルートを演奏するのは好きだけど、聴くのはそこまで好きじゃないし、実際にあまり聴いていない」、レッスンをしていると時々、このような奏者を見かけます。

良い音を聴かないという状況では、余程の天才でもない限りはっきり言って上達することはかなり難しいです。

なぜなら、その奏者の頭の中に「良いビブラート」「良い音色」というのがイメージできていないからです。

イメージ力は良い音を聴くことによってのみ身につけることができます。

イメージできない音は、どれだけ練習しても習得することはできません。

良い音楽を聴くことも1つの練習、と思って取り組んでみてください。

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