ファゴットとは?種類・特徴・選び方を徹底解説【楽器百科】

ファゴットとは?

「ファゴットとは、いったいどんな楽器なのだろう?」と疑問に思って、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。ファゴット(Bassoon)は、オーケストラや吹奏楽で活躍する木管楽器(きもっかんがっき:木でできた、息を吹き込んで音を出す楽器のグループ)のひとつです。

全長はおよそ134cmにもなる、とても背の高い楽器で、管(くだ)が折り返されて2本に重なっているのが特徴です。その独特な形から、初めて見た人は「これも楽器なの?」と驚くこともしばしば。低くて温かみのある音色は、ときに人の声のように歌い、ときにユーモラスでコミカルな表情を見せてくれます。

ファゴットは「ダブルリード楽器」と呼ばれる仲間です。リードとは、息を吹き込むと振動して音のもとになる薄い板のこと。ファゴットは2枚のリードを重ねて使うため「ダブル(2枚)リード」と呼ばれます。同じ仲間にはオーボエがあります。この2枚のリードの振動が、ファゴットならではの豊かで深みのある響きを生み出しているのです。

ファゴットの歴史

ファゴットの起源は16世紀頃のヨーロッパにさかのぼります。当時は「ドゥルツィアン」と呼ばれる楽器が原型とされ、これが改良を重ねながら現在のファゴットへと発展していきました。

「ファゴット(Fagotto)」という名前はイタリア語に由来し、「薪(まき)の束」という意味があるといわれています。これは、管が束ねられたような独特の形からつけられた愛称だと考えられています。

17〜18世紀には、バロック音楽の作曲家たちがファゴットのために多くの曲を書きました。特にヴィヴァルディは、ファゴットのための協奏曲を37曲も残しており、この楽器の魅力を世に広めた立役者です。その後、19世紀にはドイツの楽器製作者ヘッケルが、現在につながる「ヘッケル式」と呼ばれるファゴットを完成させ、より演奏しやすく、音程の安定した楽器へと進化しました。

ファゴットの種類

ファゴットには、大きく分けて2つの運指システム(指の使い方の方式)があります。初心者の方は、まずこの違いを知っておくとよいでしょう。

ヘッケル式(ジャーマンシステム)

ドイツで生まれた方式で、現在世界中でもっとも広く使われているのがこのヘッケル式です。日本やアメリカ、ほとんどのヨーロッパ諸国で主流となっており、これから始める方は基本的にこのタイプを選ぶことになります。

ビュッフェ式(フレンチシステム)

フランスで発展した方式で、ヘッケル式とは運指や音色が少し異なります。やわらかく繊細な音色が特徴ですが、使用する地域や奏者が限られているため、入手や教則本の面ではやや特殊といえます。

コントラファゴット

通常のファゴットよりもさらに1オクターブ低い音が出る、大型の仲間です。オーケストラの中で、いちばん低い土台のような音を支える役割を担います。背丈ほどの長さがあり、その重低音は地響きのような迫力があります。

ファゴットの特徴・音域・難易度

ファゴットの最大の魅力は、なんといってもその音色の幅広さです。低音域では落ち着いた重厚な響き、中音域では人の声のような温かさ、高音域ではどこか切なく歌うような表現が可能です。オーケストラでは「縁の下の力持ち」として全体を支えつつ、ソロでは主役級の存在感も発揮します。

音域について

ファゴットの音域は、木管楽器の中でもとくに低い部類に入ります。最低音は「変ロ音(ピアノでいうとかなり左側の低い音)」から、高音域まで約3オクターブ半をカバーします。この広い音域が、表現の豊かさにつながっています。

難易度について

正直にお伝えすると、ファゴットは決して「簡単な楽器」ではありません。理由は次のとおりです。

  • 楽器が大きく重いため、安定して構えるのに慣れが必要
  • 運指(指使い)が複雑で、覚えることが多い
  • 2枚のリードを使うため、音を出すコツをつかむまで時間がかかる
  • リードの管理や調整にも知識が必要

とはいえ、これらは正しい指導を受けながら練習を重ねれば、少しずつ確実に上達していきます。最初の音が出せたときの感動は格別ですし、演奏人口が比較的少ないため、吹奏楽部やオーケストラでは重宝される存在になれるという嬉しいメリットもあります。

初心者がファゴットを始めるには

ファゴット初心者がスムーズにスタートを切るためのポイントをご紹介します。

まずは先生に習うのがおすすめ

ファゴットは独学が難しい楽器の代表格です。音の出し方やリードの扱い、姿勢など、最初に正しい基礎を身につけることがとても大切。音楽教室やレッスンに通うか、学校の吹奏楽部などで経験者から教わるのが理想的です。

体の大きさは心配しすぎなくてOK

大きな楽器なので「自分に扱えるかな?」と不安になるかもしれません。しかし、ストラップやサポート器具を使って体重を支えるため、体格に自信がなくても演奏は可能です。中学生から始める人も多くいます。

リードに慣れることが第一歩

ダブルリードは最初の難関です。市販のリードから始めて、慣れてきたら自分でリードを調整・製作する人もいます。リードの状態で音色や吹きやすさが大きく変わるため、ファゴット奏者にとってリード選びは一生のテーマともいえます。

ファゴットの選び方

これからファゴットを手に入れたいと考えている方に向けて、選ぶ際のポイントを整理します。

1. まずはレンタルや学校の楽器から

ファゴットは高価な楽器なので、いきなり購入するのはハードルが高いものです。続けられるかどうかわからない段階では、学校の備品やレンタルサービスを利用するのが賢明です。

2. キーの数(仕様)を確認する

ファゴットには、音程を取りやすくする補助キーが付いたモデルがあります。初心者向けのモデルから、プロ仕様の多機能なモデルまでさまざまです。最初は標準的な仕様で十分ですが、将来を見据えて選ぶのもよいでしょう。

3. 信頼できるメーカーを選ぶ

代表的なメーカーには、ドイツの「ヘッケル」や「アダムス」、日本の「ヤマハ」などがあります。とくにヤマハは初心者向けの扱いやすいモデルを展開しており、入門用として人気があります。

4. 必ず試奏する、または専門店で相談する

楽器は一本一本に個性があります。可能であれば専門店で実際に吹いてみる、あるいは信頼できる店員さんや先生に相談して選ぶことを強くおすすめします。

ファゴットの価格帯

ファゴットの価格は、木管楽器の中でも高めです。おおよその目安を見てみましょう。

  • 初心者・入門用(ヤマハなど):約50万〜100万円 学生や始めたばかりの方向け。
  • 中級者向け:約100万〜200万円 ある程度演奏に慣れ、表現を追求したい方向け。
  • 上級者・プロ向け(ヘッケルなど):200万円以上〜数百万円 最高峰のヘッケル製は、数百万円に達することもあります。

このほか、リード(消耗品)が1枚あたり数千円かかります。価格だけ見ると驚いてしまうかもしれませんが、だからこそ最初はレンタルや学校の楽器から始める人が多いのです。中古市場も活発なので、予算に応じて探してみるとよいでしょう。

まとめ

ファゴットは、温かく深みのある音色と、コミカルからシリアスまで幅広い表現力を持つ、奥深い木管楽器です。決して簡単な楽器ではありませんが、その分、演奏できたときの喜びは大きく、合奏の中でも欠かせない存在になれます。「ちょっと珍しい楽器に挑戦してみたい」「縁の下の力持ちとして音楽を支えたい」という方には、ぜひおすすめしたい楽器です。まずはレッスンやレンタルから、ファゴットの世界への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ファゴットは2枚のリードを使う「ダブルリード」の木管楽器で、低音域の温かい音色が魅力
  • 主流は世界中で広く使われる「ヘッケル式」で、初心者はこのタイプを選ぶのが基本
  • 運指やリードの扱いが難しいため、独学より先生に習うのがおすすめ
  • 価格は入門用で約50万〜100万円と高めなので、最初はレンタルや学校の楽器が安心
  • 演奏人口が少なく、吹奏楽やオーケストラで重宝される存在になれる

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