「自分が吹いているクラリネットの歴史について知らない」「楽器の知識を増やして上達の足掛かりとしたい」このような悩みはありませんか?
実は楽器の歴史を詳しく知ることは、自分がこれから使っていく楽器や仕掛け選びに大きな影響を与えていきます。
そこでこの記事では、吹奏楽CDのレコーディング30枚以上に携わった著者が、クラリネットの歴史について詳しく紹介していきます。
この記事を読めば、クラリネットの知識が深まること間違いなしです。
ぜひ最後までお読みください。
クラリネットの元となった楽器
クラリネットの元となったのは、フランスで生まれた「シャリュモー」という、後期バロックから初期古典派の時代に用いられていたシングルリード楽器です。
1700年頃、このシャリュモーをドイツのヨハン・クリストフ・デンナー氏が改造したことで、クラリネットが生まれたと言われています。
このデンナー氏の改造によって、シャリュモーと比較してかなり広い音域を手にすることができました。
この改造によって新しく生まれた音域の音色が、中世・ルネサンス期に使われたトランペットの一種である「クラリーノ」の音色と似ていたため、「クラリネット」と命名されたようです。
ただし初期のクラリネットにはキイがほとんどついておらず、かなりシンプルな作りをしていました。
例えば現代のクラリネットにあるような、指をおさえやすくするリングや、あるキイを押すと、他のキイが自動的に連動する仕組みなどはこの時点では搭載されていません。
そのため広い音域の音程をコントロールするのが難しい・運指が複雑になるという2つの問題点が生じてきました。
これらの問題点を解決するために、長い年月をかけて徐々にキイが増えて、現在のクラリネットの形にいたります。
ちなみにクラリネットの低音域を指す「シャリュモー音域」は、この楽器のシャリュモーが語源となっています。
素材から見る過去と現代のクラリネット
キーの数が過去のクラリネットは少なかった、というのは前述した通りですが、キーの素材も異なっていました。
現代のクラリネットのキイの素材は洋白で、上から銀メッキをかけて塗装をするのが一般的とされています。
一方で過去のクラリネットのキイは、現在でもサックスなどで使われている真鍮が用いられていました。
また、管の素材も過去のクラリネットと現代のクラリネットでは異なっています。
過去のクラリネットは、ヨーロッパで手に入る「ボックスウッド」や「黒檀」を使って製造されていました。
一方で現代のクラリネットは、アフリカ原産の「アフリカン・ブラックウッド(別名:グラナディラ)」を用いています。
しかし、このアフリカン・ブラックウッドは伐採のし過ぎで準絶滅危惧種に指定されてしまいました。
そのためヤマハなどが植林プロジェクトを立ち上げるなど、アフリカン・ブラックウッドを守る活動が始まっています。
クランポンでは「グリーンライン」と呼ばれる、粉末状にしたグラナディラとカーボンなどの素材を配合した新素材も開発されました。
数年から数十年先のクラリネットは、別の素材で管が構成されているかもしれませんね。
さらに過去のクラリネットは、マウスピースも木製で作られていたことに特徴があり、リガチャーもなく、紐でリードを固定していました。
現代のクラリネットのマウスピースはエボナイトが一般的、リガチャーは紐もありますが、金属製・革など様々な素材がありますね。
現代のクラリネットのマウスピースやリガチャーは、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
>【クラリネット】バンドレンのマウスピース7本を徹底比較~5RVライヤー/M30/M30ライヤー/B40/B40ライヤー/BD5/BD4
>クラリネットのおすすめリガチャー9個の特徴を徹底解説~シルバースタイン/ウッドストーン/ロブナー/ブルズアイ他
クラリネットのシステムについて
現代のクラリネットは、過去からの歴史の積み重ねで「ビュッフェ=クローゼ式」「エーラー式」の2つのシステムが主流で、それ以外にも様々なシステムに分かれています。
それぞれのシステムの特徴を知っておき、ご自身のクラリネット選びの参考にしてみてください。
ビュッフェ=クローゼ式(ベーム式)
今、最も多くのクラリネット奏者が使用している楽器が「ビュッフェ=クローゼ式」のモデルとなっています。
1840年代のフランスにて、オーギュスト・ビュッフェ氏とイアサント・クローゼ氏が共同で開発したシステムです。(そのため「フランス管」とも呼ばれています。)
現代にいたるまで様々な改良がなされていきますが、簡単な指使いで演奏することができるため、広く流通しています。
例えばクロスフィンガリング(指を押す動きと指を離す動きを同時に行う運指のこと)などを改良によって減らす試みがなされました。
なお、ビュッフェ=クローゼ式は「ベーム式」とも呼ばれています。
ドイツのフルート奏者兼制作者のテオバルト・ベーム氏が、フルートの音量を大きくしたり、指使いを簡単にするために用いたキイシステムをクラリネットに応用したため、ベーム式とも呼ばれています。
エーラー式
1900年代にベルリン・フィル・ハーモニー管弦楽団のクラリネット奏者、オスカール・エーラー氏によって開発されたシステムです。
前述したビュッフェ=クローム式との大きな違いは、過去のクラリネットの良さをそのまま引き継いだ点にあります。
マウスピースや指使い、リガチャーではなく紐を使う点など、過去のクラリネットの設計から変化していません。
開発国であるドイツのクラリネット奏者は、特にこのエーラー式を好んでいます。
ただし吹奏楽ではあまり使われず、オーケストラで使われることが多いシステムでもあります。
その他のシステム
エーラー式と似たシステムとして、主にオーストリアのクラリネット奏者に用いられている「ウィーン・アカデミー式」と呼ばれるシステムがあります。
右手中指で押さえる真ん中のトーンホール(音孔)が、エーラー式ではカバードキイになっているのに対し、ウィーン・アカデミー式ではリングキイになっています。
さらに、エーラー式では、カバードキイの近くに同時に開閉するサイドキイが2つ設置され、通気を更に改善しているのに対し、ウィーン・アカデミー式では、下管のかなり下の方に通気用のサイドキイが一つだけ設けられているのが、両者の違いです。
前述したビュッフェ=クローゼ式を「フランス管」と呼んでいたのに対し、エーラー式・ウィーン・アカデミー式を併せて、「ドイツ管」と呼んでいます。
ドイツ管吹き出ないと、ベルリン・フィルやウィーン・フィルには入団できないそうです。
気軽にドイツ管の響きを楽しむことができるのは、メリットと言えるでしょう。
その他、ディシーランドジャズを演奏するクラリネット奏者に多く使われている「アルバート式」というシステムもあります。
アルバート式は、キーのないトーンホールでスラーを演奏しやすいといった点が特徴です。
歴史の最先端にある、現代のクラリネットを安価で入手する方法

ここまで見てきたように、様々な歴史の積み重ねによって現代の高性能なクラリネットが出来上がりました。
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